現役時代は「燃える男」そして監督になれば「闘将」と言われた星野仙一。身体に脈々と流れていたのは4年間、島岡吉郎監督の下で鍛えられてきた「人間力野球」であった。 星野投手の拙い守備から早大に敗れた試合後、グランドに戻るなり 「こんな世界一のグラウンドで練習してなんでエラーするんだ。グラウンドの神様に謝れ」と激怒した。スライディングパンツ一枚になり、レギュラーたちは守備位置に散って正座。 「神様申し訳ありません。二度とエラーはしません。」とグランドに額をすりつけた。
もちろん島岡監督も本塁に正座。夜となりグラウンドは闇に包まれた。果てしなく続く正座。星野仙一は「真っ暗くて見えないし、島岡監督は先に合宿所に帰ったと思った。」途中から雨が降り出し明け方を迎えた。周囲が明るくなりかけ、星野さんがふとみると、なんと島岡監督もパンツ一枚のまま正座していた。 「島岡監督は合宿所に引き揚げただろう、てっきりそう思い込んでいた。ところがホームをよく見ると監督のデカパンがぼんやり浮かび上がっている。この時ばかりは素直に頭が下がりました。 参りました。本当に明大4年間で最高の思い出です。 自分のノーヒットノーランなんて小さい小さい。」 鉄拳は当たり前。しかしそこには必ず愛情があった。中日時代、鉄拳制裁で鍛えた男たちに胴上げされ、阪神時代は赤星の頭ごと抱擁し、楽天ではマー君も抱きしめた。 星野監督の一挙手一投足が鮮やかによみがえってくる。大好きな男はもういない。 しかし 「熱い心」 は忘れられない。 「熱く燃えよう、燃えるものがある。」